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チャットボットと人工知能は、どれだけ人間に近づけるのか? 進化のキーワードは「感情」という情報

2017.02.13 RESEARCH

マイクロソフト社による3つのチャットボットの明暗

ユーザーと自動的に対話するbotが「人工無能」と呼ばれたのは過去の話。現在のチャットボットは機械学習と連動し、進化のきざしを見せています。

人気のあるチャットボットのひとつに、日本マイクロソフト社が開発した女子高生型AI「りんな」があります。

りんな

りんなは2015年7月31日、LINEのサービスとして誕生しました。謎めいた後ろ姿と本物のJK(女子高生)と会話しているようなマシンガントークが注目を浴び、サービス開始から約1ヵ月間で約130万人を超えるユーザー数を獲得。現在ではLINEのトータルユーザー数は450万人を突破し、Twitterでも13万以上のフォロワーがいます(2016年2月現在)。

チャットボットにも関わらず、2016年10月8日にはドラマ「世にも奇妙な物語」に出演したり、サイン会が実施されたり、アイドルのような活動を展開しています。YouTubeでは、ラップのミュージックビデオも公開されました。

りんなは、2014年5月に登場した中国マイクロソフト社の「Xiaoice(シャオアイス:小冰)」の技術を活用したことが明らかにされています。こちらも中国では絶大な人気を誇るチャットボットです。Weibo(微博)やWeChat(微信)などのプラットフォームに対応し、ショッピングモールなどのECサイトとも連動。テレビの天気予報でレポートしたこともあります。

小冰

りんなや小冰は成功したチャットボットです。多くのユーザーに愛されています。しかし、マイクロソフト社のチャットボットがすべて成功しているわけではありません。ご存知の方も多いかもしれませんが、米国で発表されたTwitterで展開する「Tay(テイ)」は、公開後たったの1日で閉鎖に追い込まれました。

Tayが閉鎖されたのは、人種差別などのヘイトスピーチや、ヒットラーは正しいなどの問題発言をするようになったからです。ニューラルネットワークによる教師あり学習(Supervised learning)で会話を学ぶ仕組みでしたが、悪意を持ったユーザーがTayに悪しき教育を行ったことが原因です。

人工知能には「良心」も「感情」もありません。対話によっては悪者にも豹変します。AIは、現状では無垢の幼児にすぎないことを認識する必要があります。

「りんな」のコンセプトと構成するテクノロジ

りんなのコンセプトには「Emotional AI」あるいは「Conversation as a Platform」という言葉が使われています。

同じマイクロソフト社のCortanaは生産性向上が目的ですが、りんなは会話を発展させて、できるだけ長引かせるようにします。たとえば「明日の天気は?」の問いに対して、Cortanaは「晴れです」という答えになる一方で、りんなの場合は「どっか出かけるの?」というように。

りんなのシステムは、フロントエンドからのリクエストをコアワーカーから言語理解のチャットワーカー、音声認識の音声ワーカー、画像認識の画像ワーカーの3つで処理します。また、それ以外のワーカーが必要になった場合、自由に追加して優先度を調整できる仕組みも備えています。

チャットワーカーは、Learning to Rankにより、自然言語処理のアルゴリズムをランク付けしていることが特長です。Web上にある大量の単語と単語の類似性をベクトル化するWord to Vector、用語頻度(TF)と逆文献頻度(IDF)が使われています。

このような自然言語処理により、正解より「気持ちよさ」を重視した回答を瞬時に導き出します。ユーザーの気持ちを推測する高度な技術があるからこそ、愛されるチャットボットになったのでしょう。

また、犬の画像を送ると種類を認識する「犬認識」など、遊び心を刺激するテクノロジが搭載されています。画像を読み取ってコメントするだけでなく、ユーザーから送られてきた「さびしい」という投稿に合った画像を返信する機能もあります。

人間どうしのコミュニケーションでも感情表現としてスタンプが用いられますが、親近感を生む機能のひとつといえるでしょう。

人間に近づく可能性を握る「感情」という情報

今後、チャットボットや人工知能と人間の親和性を深めるためには「感情」がキーワードになりそうです。

ソフトバンク社のPepperは、cocoro SB社による感情学習型の人工感性知能で、人間の脳における内分泌をヴァーチャルに生成しているとされています。人工感性知能のひとつ「感情エンジン」では、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの8種類の内分泌を擬似的に生み出すというしくみです。人間は、信頼関係のあるユーザーから褒められたら、もっと褒められたいという内分泌が活性化します。

この感情エンジンは、Pepperだけでなくホンダの自動車にも活用が計画されています。CES 2017で発表された「NeuV(ニューヴィー)」というコンセプトカーに搭載されました。センサーやカメラによってドライバーのストレスや感情を読み取り、最終的には安全運転をサポートする相棒として、クルマと対話できることを目的としています。

チャットボットに搭載されているテクノロジは、今後、自動車を含めてあらゆる家電製品に搭載されるようになるかもしれません。IoTのユーザーインターフェースとして、人工知能はなくてはならないものとなることが推測されます。

チャットボットにできること、人間でなければできないこと

ところで、コールセンターでは、1件あたりの処理時間を短くして大勢のクレームを処理するよりも、丁寧に時間をかけてお客様の話を傾聴した方が、顧客満足度(CS)を向上させることができる場合があります。

サポートオペレーター

クレームの連絡をするお客様は感情的になっていることが多いものです。苦情を話したがっています。このようなお客様に効率的な時間優先の手短な対応をすると、ますます怒りに火を注ぐことも少なくありません。

そこで、簡単な質問であれば蓄積されたFAQのデータベースからチャットボットで対応し、感情的なクレームは人間のオペレーターが親身に話を聞くというような、チャットボットと人間の役割分担が大切になります。

人工知能が人間の感情を推測する時代も、そう遠くない未来に実現するはずです。しかし、現状ではチャットボットと人間のコラボレーションが求められているのではないでしょうか。

Posted by

mm
石井 智宏 モビルス株式会社 代表取締役

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